東野圭吾 初期作品おすすめ3選|“売れなかった時代”に埋もれた名作たち

東野圭吾という名前を聞いて、どんな作品を思い浮かべますか?
『容疑者Xの献身』や『ナミヤ雑貨店の奇蹟』など、数々のヒット作を持つ東野圭吾さんですが、ここまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。
東野さん自身が「ターニングポイントだった」と語るのが、39作目の『秘密』。
それまでの38作品は、まだあまり注目されていなかった“初期作品”といえるかもしれません。
今回は、その“初期作品”の中から、特に印象に残った3作を選んで紹介します。
現在の東野圭吾さんとはひと味違う、初期ならではの魅力に触れてみてください。
📚 初期作品おすすめ3選
『変身』
あらすじ
世界初の脳移植手術を受けた平凡な男を待ちうけていた過酷な運命の悪戯!
脳移植を受けた男の自己崩壊の悲劇。
平凡な青年・成瀬純一をある日突然、不慮の事故が襲った。そして彼の頭に世界初の脳移植手術が行われた。それまで画家を夢見て、優しい恋人を愛していた純一は、手術後徐々に性格が変わっていくのを、自分ではどうしょうもない。自己崩壊の恐怖に駆られた純一は自分に移植された悩の持主(ドナー)の正体を突き止める。
推しポイント
① 人格が“変わっていく”恐怖がリアルすぎる
気づかぬうちに少しずつ性格が変わっていく純一。その変化があまりにもじわじわと描かれるので、読んでいる側まで不安になってきます。
「もし自分だったら」と思うとゾッとせずにはいられません。
②恋人・恵との関係が切なすぎる
ただ傍にいることしかできない恵。かつて愛した“純一”が変わっていく様子を目の当たりにする彼女の姿には胸を打たれます。
恋人として、どこまで相手を信じられるか。そんな問いまで突きつけられます。
③“命の奇跡”と“倫理の闇”を描いた問題作
脳移植という医学の進歩が、果たして人を幸せにするのか――。
読めば読むほど、希望と絶望が入り混じる複雑な感情に包まれます。
読み終えたあと、きっと誰かと語り合いたくなるテーマ性です。
④ホラーのようで、実は“純愛”小説
ラストに込められた一行が、とても静かで、あたたかい。
読後感は決して明るくないけれど、「それでもこの物語を読んでよかった」と思わせてくれる、優しさに包まれた結末です。
『ブルータスの心臓』
あらすじ
産業機器メーカーで人工知能ロボットの開発を手がける末永拓也。将来を嘱望される彼は、オーナーの末娘・星子の婿養子候補になるが、恋人・康子の妊娠を知り、困惑する。そんな矢先、星子の腹違いの兄・直樹から、同僚の橋本とともに、共同で康子を殺害する計画を打ち明けられ…。大阪・名古屋・東京を結ぶ完全犯罪殺人リレーがスタートした。傑作長編推理。
推しポイント
① 殺人リレー計画という緻密なストーリー設定
拓也が仕掛けた殺人計画は、ただの衝動的な犯罪ではありません。
「自分ひとりでは手を汚さない」という冷酷な計画の緻密さに、思わずゾクッとさせられます。
計画の裏に隠された人間の欲望と打算がリアルに描かれていて、一気に物語へ引き込まれます。
② 犯人パートと捜査パートの“二重構成”がスリリング
物語は、犯人側と警察側、ふたつの視点が交互に描かれます。
だからこそ「犯人たちはバレずに逃げ切れるのか?」「警察はどう追い詰めるのか?」と、両方のハラハラ感を同時に楽しめます。
読んでいて手に汗握る感覚がクセになります。
③ 先が読めない怒涛の展開
計画通りにいかない状況、思いもよらない人物の死、そして次々に訪れる急展開。
「次に何が起きるのか」が予想できず、ページをめくる手が止まりません。
物語が進むたびに加速していく緊張感がたまらない一作です。
④ 衝撃のラストが突きつける“人間の弱さ”
ラストに待ち受けるのは、どこか虚しさを感じさせる結末。
人間の欲望や弱さが、最後の最後で静かに、けれど容赦なく突きつけられます。
読み終えたあと、背筋に冷たいものが走るような余韻を残してくれます。
『むかし僕が死んだ家』
あらすじ
「あたしは幼い頃の思い出が全然ないの」。
7年前に別れた恋人・沙也加の記憶を取り戻すため、私は彼女と「幻の家」を訪れた。
それは、めったに人が来ることのない山の中にひっそりと立つ異国調の白い小さな家だった。
そこで二人を待ちうける恐るべき真実とは……。
超絶人気作家が放つ文庫長編ミステリ。
推しポイント
① ほぼ二人だけ、ほぼ一つの家だけ――制約を逆手に取った濃密な物語
登場人物は「私」と沙也加のほぼ二人、舞台はほぼ「幻の家」のみ。
この限られた設定だからこそ、物語の密度と緊張感が異常なまでに高まっています。
息を詰めるようなやりとりに、読み手もどんどん引き込まれていきます。
② 伏線の張り方が巧妙
一見何気ない描写や言葉に、あとから「そういう意味だったのか」と気づかされる驚きが待っています。
騙されていたことに気付いた瞬間、思わず最初から読み返したくなるほど。
緻密な構成力に唸らされる一作です。
③ 沙也加の過去に隠された衝撃の真実
物語の核心に迫るにつれ、沙也加の生い立ちにまつわる壮絶な秘密が明らかになります。
その衝撃は、読者の予想をはるかに超えてきます。
単なる記憶探しの物語ではない、深い悲しみと衝撃を抱かせる展開です。
④ シリーズファンにもたまらない“仕掛け”
実はこの「私」、あの人気シリーズの若き日の姿。
単体でももちろん楽しめますが、著者の他作品を読んでいる人なら、さらにニヤリとできる仕掛けが隠されています。
東野圭吾作品をシリーズで追いかける楽しさも味わえる一冊です。
まとめ
東野圭吾さんの初期作品には、まだ広く知られていない名作がたくさんあります。
今回ご紹介した3作品は、その中でも特に強く印象に残ったものです。
今の東野圭吾作品が好きな方も、ぜひこの“駆け出しの頃の東野圭吾さんが紡いだ物語たち”を読んでみてください。
きっと、新たな魅力に出会えると思います。